りっとの部屋

映画とか、日常とか、ゲーム開発とかを綴ります。

かいこ。

街を歩くと、この建物ってこんなんだっけ?と思うことが増えた。
近所を歩いていても、すぐそこの場所ですら、ここってコンビニだっけ?一軒家だっけ?となってしまう。
しかも確認する方法がないので、余計にむずがゆくなって、結果としてわかんねーなこれとポイっとしてしまうことが増えた。

また別の日には、些細なことで涙もろくなった自分に気が付いた。
昔から泣き虫だったけど、人前で堂々と涙を流せるようになったのは、ここ数年の話な気がする。
勿論、あれだけハスって避けていた鬼滅の刃も、劇場で観てマスクはびしょ濡れになったし、家で観る些細なドキュメンタリーでも簡単に泣くようになった。
挙句の果てには、車の中で音楽を聴きながら泣くこともあった。
我ながらドン引きである。

でも、これっていつからだっけ?と振り返ると、20歳を境にその傾向が強くなったように思える。
現代社会において、20歳は区切りの年。
昔で言うと元服のようなものだと思う。
僕らの年なんて、コロナ禍に巻き込まれたせいか、より人との繋がりが薄れたように感じて、些細な事でも泣けるようになったのかもしれない。
俗にいう懐古だ。

街を振り返る懐古、過ちを振り返る回顧、業績が悪化した結果の解雇、僕はそのすべてを一年で経験した。
解雇は正確には僕が体験した話ではない。
ただ、僕の目の前で、仲間だった人たちが大勢首を切られた。

思えば波乱すぎるオトナの幕開けだった。

当たり前が当たり前じゃなくなって、失ってからじゃないと気づけない。
失敗談を学ぶイソップ物語があるが、僕ら人間は実際に体験しないと分かろうとしない。

かなり遠回しな前置きになったが、先日「花束のような恋をした」を観た。
以前から言っているが、僕は恋愛映画がとても苦手なのである。
それは僕自身に強く反映されていて、目の前でイチャイチャされると、内心ぶっ飛ばすぞって思っているし、俺の女になれよみたいなセリフは、吐き気がするほど苦手である。

だから、その手の展開がある少女漫画も苦手だ。
うるせぇよばーかとなってしまう。
だから、正直この映画を観るのは勇気がいった。
周りが良作だったと言っていても、それは僕の基準からすると適応できない場合が必ず存在するからだ。
特に、人と恋愛の価値観がずれているが故に、共感するフリをするのが精いっぱいなのだから。
だから恋愛映画を観るのは本当に勇気がいる。
まして劇場で観るとなればよっぽどである。

だが、ここまでハスった結果後悔したことが山ほどあった。
だからここは経験に基づいて見るしかないと思い立つまで数日かかった。

劇場に入ると、最後の回なのに結構入っていて、周りはカップルよりも女子高生とか女子大生が多く感じた。
どころか、男一人なんて僕だけだった。
これやっちまったなぁと思いながら、席に座った。
幸い、両隣も前もいなくて、いるのは後ろにずらっと座ってるくらい。
後ろならまだ大丈夫かなんて思いながら、スクリーンのど真ん中、やや右側のVIP席を狙い撃ちした僕は、最高のポジションで映画を楽しむことにした。

映画自体は、なんてことない普通の恋愛ものである。
これ若者観た後に、インスタでエモいって言うんだろうなぁと思いながら見てしまった。

要所要所のセリフに、あぁ!わかるぞ~!なんてニヤニヤしたり、菅田将暉かっけぇ・・・とか、だよな!という共感が相次いだ。


ここから先は、確実に一部箇所のネタバレが発生します、未鑑賞であればお気をつけください。

 

ただ、どこか違和感が転々としていた。
というのも、全く同じ状況でもなんでもないはずなのに、何か頭の中に引っかかった。

そして、その原因が分かったのが、お互いが社会人になる場面からだった。

見覚えというか、これ元カノとこんな感じですれ違ったな!と思ったのだ。
そこからは、席を立って帰るのが賢明なのではと思ってしまった。
はやく帰りたいとすら思った。
心のどこかで、冒頭のシーンに繋がって、またあるんじゃないかと思っていたが、さっくりと裏切られることになる。

なんやかんやあって、ヒロインが新しい仕事先の上司にアタックらしきことをした場面があった。
そこからは、地獄だった。
映画は観てるのに、頭の中じゃ完全にあの頃を思い出しているのだから。

やっぱそうだよな~なんて思いながら、見ていると身内の結婚式のシーンに移った。
そこで、お互い別れることを決意するのだが、この別れ方の演出が最高にブチ切れたくなったのだ。
これは脚本批判でもなんでもなく、本当に素晴らしい作品だった。
だからこそ、この作品はもう二度と見てはいけないと思った。

観た方は思い出していただきたいのだが、あの後、観覧車に乗る流れになった。
そしてカラオケ、ファミレスと転々とし、フラッシュバックシーンになる。


ここで、僕のHPは完全になくなった。


というのも、観覧車はその元カノに告白した場所だったし、ファミレスもカラオケも、とても思い出深いところだからだ。

こればっかりは、演出家を恨んだ。
そして、最高な演出だった。

麦くんとほぼ同じ行動をとったのだあの頃の僕は。
(結婚は言ってないけどね)
ただ、その頃の僕は本気でなんだかんだ結婚とかするんじゃないかなって思っていたし、別れたときはそれ相応にショックだった。
そのまま夜バイトに行って、顔が凄くてとても心配されたのは懸命に覚えている。

そして、ヒロイン側の回答が、何をやっても変わらないのはわかっていた。
だって、僕もそうだったから。

心の中で、麦くん無理だよそれは無理なんだよぉ・・・と呟いていた。

ファミレスの外に出てからの演出も素晴らしかった。
お互い別れることはこの段階でわかってるからこそ、キスはなしであの構図、あんなに悲しげだけど綺麗なショットはあるのかと思った。

ただ、ここから先の魅せ方はがらりと変わった。
ここ20分間ほどの辛い展開を、変えさせるようなテイストで、また最後に笑い合った二人を観れたことは、観客にとっても良かったのではと思う。

浮気の下りとかも、ちゃんと笑わせに来てるし、友達以上だけど、恋人未満に戻った二人。
この関係が最高にちょうどいいと思ってしまうのは僕だけだろうか。

そして最後の別れ際のシーン。
お互いに後ろ姿越しに手を振って別れる。

そういえば僕も最後は笑って見送った気がする。

未練なんて今となっては全くないし、お互い別の道、別の人と歩んでいる。
どこかリンクしていて、リンクしていない気もした。
劇場を出る際に、腰が重かった。
後ろの女子高生は、私彼氏と別れようかなー!
映画に影響されすぎやろ!ははは!と会話していたが、お前らのベクトルとは遥かに違うし、そんな会話してる時点で重さも違うだろと、心の中でツッコミを入れた。

そして劇場を出てからハッとした。
僕にとって2月は、様々な恋愛ごとのイベントや、特殊イベントが発生することの多い月だった。
元カノとも当然そうだったのだが、劇場を出ると、その告白した観覧車があった。

思わず、ここまでリンクすることあるか?
もう二年前の話だぞ!なんて思ってしまった。

念押しするが、未練はない。
どころか、おかげでちゃんと新しい道で正解だったと思えた。

思えば二年前、別れてから、心のどこかで敵対心があった。
よくルサンチマンとか、そういう言葉を使うのだが、ちゃんと僕は前に進んだぞと見せつけたいとすら思って、もがき続けた。

賞レースも、正直好きではなかった。
でも、何かで勝てば、自分の中で納得できる節ができる気がして、もがいた。

そこから、昨年のKCGアワードで佳作受賞。
ただ納得できなかった。

そこから、色んなコンテストに出た。

ただ、それでも賞は取れなかった。

なんというか、こんなに負け続けるのかとすら思えた。
いつしか、無冠の帝王とすら呼ばれていた。

制作していたゲームも、今回もコンテストで負けた。
流石に一次は突破してもいい作品だろうと思っていたが、あっけなく散った。
花びらのように散ったのだ。

だが、巻き返せるチャンスは残っていた。
結果として、昨年のアワードのリベンジマッチに成功した。

優秀賞を受賞したのだ。
そして、優秀賞を獲得したチームのみが行う本戦に出場し、そこでもプレゼンを行う。
最終的に、1チームのみが最優秀を与えられることになる。

プレゼンの順番も、申し分ないところを引いてくれた。
5番目、意地でもここが欲しかった。

戦略的なところもあるが、何よりも、僕にとってはここは、競馬でいうところのダービーや有馬記念レベルのグランプリレース。

そして、5番は、かの帝王ディープインパクトや、昨年の三冠馬コントレイルが、ダービーで背負った番号なのだ。
そして、この映画で、もう一度あの頃の見返したい気持ちを再確認することができた。

こんなにも、高校の頃から引き続いてきた流れがリンクするとは思わなかった。

正直驚いているが、流れが来ているようにすら思える。

全ての集大成を背負って、僕は来週、板の上に立つ。

「花束のような恋をした」
最高で最悪で、二度と見ません。
僕にはもう十分すぎたから。



りっと。